引っ越し相談事例集


  (事例15)4ヶ月たってからエアコンのキズを発見
   
 3月に引っ越しをして、7月にエアコンを使おうとして取り出したら、エアコンにキズを見つけました。事業者に弁償するように言いましたが、とりあってもらえません。
 事業者の事故に関する責任について、荷物を引き渡した日から3ヶ月以内に通知をしないと、事業者の責任は消滅します【標準引越運送約款第25条】。これは、エアコンや季節の衣類など、その季節にならないと使わないものがあるので、3ヶ月という期間が設けられているのです。ただし、事業者自身が荷物の紛失や破損の事実を認めている場合は、3ヶ月を過ぎてもこの限りではありません。
 引っ越してすぐに使用しない荷物であっても、早めに梱包を解き、荷物の状態を確認しておくことが肝心です。

[一覧へ] 


  (事例16)形見のネックレスが紛失
   
 引っ越しの際、親の形見のネックレスを紛失されてしまいました。事業者に損害賠償請求をしたいけれど、思い出深い品でもあるので、単に時価だけでの賠償では満足できません。
 注意しなければならないのは、事例のような貴重品については約款上、引き受け拒否ができる荷物とされているということです【標準引越運送約第4条第2項】。事業者は事前に利用者に対して運送上特に注意を要する荷物の有無を確認する義務があり【標準引越運送約款第8条】、利用者もまた告知する義務があります。
 事業者が運送を引き受けていた場合、どのような条件で契約していたかを確認する必要があります。特約に該当する荷物であることを知って契約していた場合は、事業者はネックレスの時価だけに限らず、親の形見を紛失したことによる精神的な損害についても賠償請求できます。

[一覧へ] 


  (事例17)70%の賠償しかできないと言われた
   
 引っ越しの際、天井と照明器具、さらに食器の一部が壊れました。賠償を申し入れたところ、申告書を提出して欲しいと言われ、その後、保険で処理をするので請求額の70%しか支払えないと返事が来ました。作業員の不注意でこうなったのに、納得できません。
 引っ越し作業において破損事故が起こったとすると、その賠償方法は「現状の復帰、利用者の財産的損失の補填」、すなわち専門家による修理、復元が原則であり、それに要した費用が損害の賠償額に相当します。全損のように復元不可能となった場合は、購入時の価格ではなく時価(購入価格や使用年数・耐用年数を考慮した額)がその賠償額となります。
 このケースでは、まず天井は修理代全額、照明器具の場合は修理代(修理不可能な場合は時価相当額)、食器については日常使用しているものであれば購入費を賠償するのが一般的です。したがって、この賠償額が事業者の示した請求額の70%に満たない場合であれば、その差額を請求できます。

[一覧へ] 


  (事例18)損害賠償の査定基準は?
   
 引っ越しのときテレビ(購入後2年)が全損、弁償して欲しいと申し入れたところ、「弁償には応じるが、もともと定価では買っていないのではないか。メーカーの定価では対応できない」と言われました。こういう場合、原価をふまえた査定基準はないのでしょうか。
 事例17と同様、損害賠償額は購入時の定価ではなく時価が基準となるため、消費生活センターやトラック協会では査定することはできません。損害請求は民事分野ですので、例えば損害保険会社や品物を取り扱っている専門業者など第三者による査定事例を参考に、当事者同士で話し合ってもらうのもひとつの方法です。
 損害保険会社などの場合、一般家庭電化製品については購入価格の30%程度を基準において処理しているようです。

[一覧へ] 


  (事例19)引っ越しで家具が破損、修理したが再び破損
   
 1年前の引っ越しのときに整理ダンスを破損。話し合いの末、接着剤などで修理しました。最近になって修理した部分が再び壊れてきました。事業者の責任は問えるのですか。
 1年前の時点で、破損個所の修理に関しては、合意の上解決したと解釈できます。約款では、事業者の責任は時効によって1年を経過すると消滅します【標準引越運送約款第27条】。荷物の破損は修理・復元が原則ですので、破損個所が明らかな場合は、専門家にきちんとした修理を依頼することがポイントです。

[一覧へ] 


  (事例20)紛失した荷物はどこまで賠償してもらえるの
   
 荷物が入った段ボール1箱がなくなっていました。事業者に連絡したところ、3週間後に紛失事故であることが判明。賠償請求の際、こちらは120万円を主張したのですが、事業者からの提示額は60万円、納得いきません。
 120万円を主張するのであれば、その金額に相当する証明が必要となります。事業者も60万円の賠償が妥当であることを証明しなければなりません。この事例の場合、120万円という金額から、相当の貴重品もしくは高価な品物が入っていたと推測され、事例16の場合と同様、事業者が運送を拒否できる荷物であったことも考えられます。
 賠償については、民事問題ですので、当事者間の話し合いによって解決せざるを得ませんが、第三者の専門家に算定してもらうのも一つの方法です。

[一覧へ] 


  (事例21)輸入家具についたキズの賠償額は?
   
 引っ越しの際に、外国製の家具の足にキズがつきました。輸入品であり、仕上げの塗料も日本にはなものなので、修理が難しいと聞いています。事業者には同じものと交換して欲しいと相談しているのですが、態度も悪く、話が進みません。
 修理が全く不可能なのかどうか、もう一度専門家に相談してみてはどうでしょうか。輸送中のキズであっても、その理由が事業者の免責事項に該当する場合もあります【標準引越運送約款第23条】。したがってこのような場合には、荷物事故の事実関係を確認する必要があります。
 事業者の態度が悪く相談に応じない場合は、最寄りのトラック協会などに相談して下さい。

[一覧へ] 


  (事例22)セットものの破損の賠償範囲は?
   
 引っ越しを終えて荷物を開封したら、6客セットのティ−カップがひとつ割れていました。事業者からは割れた分だけ弁償すると言われましたが、セット全体を弁償してもらわないと納得できません。
 約款では、荷物の紛失や破損など直接生じた損害は事業者が賠償することとなっています【標準引越運送約款第26条】。セット物の場合、約款に明確な規定はありませんが、一つが破損してしまったために、セットとしては使用することができないので、一般的にはセット全体について賠償しなければならないのが通例となっています。

[一覧へ] 


  (事例23)乱暴な作業で新居にキズが
   
 事業者の乱暴な作業で、新居の柱にキズをつけられてしまいました。この場合の損害賠償請求はどのようになりますか。
 約款では、荷物の紛失や破損に関する規定はありますが、家屋に関する記述はありません。しかし、事例の場合は、作業員の過失による損害ではないと事業者が証明しない限り、柱のキズは損害賠償の対象となると考えられます。
 なお、この損害賠償については金銭賠償とするのが原則
【民法第417条】ですが、修理による賠償に変えることも可能ですので、事業者とよく話し合って下さい。

[一覧へ] 

荷物の破損や紛失などで事業者が責任にならない場合

次のような理由による荷物の破損・紛失、作業の遅延などは事業者は責任を負わないことになっています。

【1】 荷物の欠陥、自然の消滅
【2】 荷物の性質から生じる発火、爆発、むれ、かび、腐敗、変色、さびその他これに類する事由
【3】 労働争議によるストライキ、社会的騒擾その他事変または強盗
【4】 不可抗力による火災
【5】 予見できない異常な交通障害
【6】 地震、津波、高潮、大水、暴風雨、地滑り、山崩れなどの天災
【7】 法令または公権力による運送の差し止め、開封、没収、差し押さえ、または第三者への引き渡し
【8】 荷送人または荷受人などの故意または過失

また、次の場合も責任を負いません。

【1】 引き受けが拒絶できる荷物について、引っ越し業者がそれを知らずに引き受けた場合に起こった事故
【2】 前項であげた荷物以外の貴重品、壊れやすいもの、変質または腐敗しやすいものなど、運送上特に注意が必要なのに、荷送人がそれを申告せずに、かつ、業者の過失がなくそのことを知らなかったために起こる損害

[一覧へ] 


 
 
   
   
   
   
   
   
   
   
   
   
   
   
   
   
   
 
 
一般社団法人 山口県トラック協会
753-0812 山口市宝町2番84号
TEL 083-922-0978 FAX 083-925-8070